一体誰のティータイム あえて言おう、温度は人肌程度だ。そう独り言を言ってポットを傾ける。 とろりと黄金色のような、それでいて小豆色のような東洋の色彩。 液体の塊のような、色彩の群れが滑らかなコマ送りのように薔薇柄の磁器に滑り落ちる。 紅茶は北斎の描く荒波のように丸く孤を描いて、波紋を広げながら穏やかな水面になる。 浮かぶ人影は二つ。紅茶の中に人影が二つ浮かんでいて、そのうちの一つがもう一人に顔を寄せる。 するとその人物は近づいた顔に頷く。 白い手が差し伸べられて、淡い黄色の薔薇の花びらが一枚紅茶に浮かべられた。 ひとしずくの水が花びらの上からくぼみに向かってころりと零れる。 そして沈黙よ 密やかに。 何気なく主は微笑む、お茶が冷めてしまいましたね、と。 客人も微笑むだろう、 いいえ、ずっと見ていたい。 ほう、変わった方だ。 私は猫だから、つめたいほうがいいんですと客人。 紅茶の花びらが月に変わるまで、あともうすぐ。 |