-チョコレートをあげてみる-





ふと思い出す。
そうだ、ちょうど、ネズミに齧られて
捨てようと思っていたチョコレートがあった。

チョコレートを包んでいた銀紙が無残に齧り取られ、
チョコレートもドロドロに溶けていた。
早く捨てておけばよかった・・が、
どうせなら目の前の黒い影に差し出してみようか?


と、思ったが先か、その黒い影はジュブズブと、変な音を立てて、
あなたのポケットに吸い付くようにくっついた。

そのまま離れる様子がみられない・・・かなり・・・・迷惑だ。

「お・・・重い・・・。くっつかれちゃいました・・。」

手で振り払おうとしても、しっかりと粘着していてまったく剥せる気配がない。

「ええっ・・このままだと家に帰れません・・。
こんな変な物体、家に持って帰れませんよ・・・・。」

しばらく困り果てていたが、埒が明かないので、
そのポケットに吸い付いた黒い物体を引きずりながら帰ろうとしたその時、
スッと黒い物体は空気のように軽やかに離れた。

「よ・・よかった・・。」

しかしどうもその黒い影は、とってもご機嫌そう。
あなたの後についてくればお菓子を貰えると思ったのかもしれない。
後ろから着かず離れない距離で、追いかけてきているようだ。



この後しばらく、その黒い影の気が済むまで、あなたは追い掛け回されることになりましたとさ。
周りの人に変な意味で注目されまくったのは言うまでもありません。



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