-屋敷を左へ・・-





屋敷を左へ進んでみた。
おっと・・段差がある、コケそうになった。
が、その先に光が指している。
どうも中庭につながっているようだった。


・・庭に出てみる。
そこはギラギラと怪しく光る妖精たちが舞う。
妖精・・・?否、それは妖魔という響きがより相応しい。
怪しく踊るその動きは、心を乱し狂わせていく。

何が虚栄で現実なのか、判別がつかなくなる。

何が自分の願望で、何が自分の意識なのか、

これが自分の欲望なのか、外から流れこんでくる悪しき考えなのか。

誘われるようにその妖精たちの輪の中に入ってしまう。


妖精たちの光が変わる。


幻想と虚構の世界に誘われてしまう。
理性が保てなくなる、そこは欲望が自分を支配する世界。
自分が何をしたのか覚えていない。


狂うように踊り果てて、自分の相手をするのに飽きた妖精たちは、自分を捨てた。


気がつけば干からびた骸のような体が、庭の花壇の上で果てていた。
もう体が動かせなかった。
どんなことをしでかしたのか、考えるだけでも恐ろしい。
自分の狂気に満ちた姿を思い出したくはなかった。

決して思い出してはならぬ過去・・人格が・・・・そこにある気がするのだ。


あなたは満月の静寂なる光の中で心を沈め、清めていった。
もう帰ろう。
体が動くようになるまで、この冷たい月の光を浴び続けて、心を沈めよう。
そしてそれからすぐに帰ろう。

そうするしかない気がした。

自分は妖精の誘惑に負けてしまったんだ。

弱い、弱い、惨めな自分が、姿を表してしまいそうで、
何だか、ひどく・・、心が荒んでいた。

誘惑と、豊悦と、快楽と、そして絶望。
この天と地が混じり合う感覚が味わえるのも、この世界ならではなのだろうか。


来年も誘いを受けたら、また来ることになるだろうか?
その時は・・・また・・・。
・・・・ここに来よう。





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