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きょ、今日ってハロウィンですよね!? |
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だからなんだ。 |
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ハロウィンって日が暮れた瞬間、こんなに景色が一変する日なんですか・・? |
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は・・・? |
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あ・・・あたりの空が真っ赤になってからすぐまた、あり得ない色になってますけど・・・。 |
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・・・・・・・・。 |
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ダ~~ンテ!これお外出ない方がいいですよね?ねっ? |
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・・・・お前そんな嘘を言ってルーミネイト様のお使いをサボる気だろ。 |
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・・・・・うへっっ!?そそそそんな!
ちがいますよぅ~~~なんならダンテもこっちきて見てくださいこの空の色と景色! |
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俺がそんなウソに毎回毎回だまされると思っているのか。 |
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んもぉぉお~~~!本なんて読んでる場合じゃないですってば~~ |
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―――――――――――ピンポーーーーーン―――――――――― |
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・・・・ぎょっっ!!? |
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なんだ客か?珍しいな。 |
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ダンテ~~~~~。 |
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お前が出ればいいだろ、どうせ極レンジャーかローザどもか或いは・・・・・ルーミネイト様・・・・、
ん!ルーミネイト様!?俺が出よう!(しゅぱっ・・!) |
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移動早っ! |
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(ガチャッ・・)(る、ルーミネイト様・・?) |
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にーーーーーーん。 |
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・・・・・・・。バンッッ!!! |
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あダンテ急にドア閉めちゃだめだってば。 |
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なんかわけのわからないネコがいた。 |
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お客さんかもしれないじゃないですかぁー。 |
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あんなの客でもなんでもない。 |
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あ、そういえば景色見ました?すごい色してたでしょ?? |
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あぁ?・・・景色? |
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えーーー気づくでしょふつう!あんな変な色の景色なのに!! |
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・・・・・・・。(がちゃっ・・:おそるおそるドアを開く) |
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オマエタチヲ迎えにキタぞ。 |
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・・っ!?(バンッッッ・・!!!:ドア閉める音) |
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え?なに?どうしたんですか??! |
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すまない俺はどうやら疲れているらしい。
ということでだ、この報告書、代わりにお前が仕上げてくれ、完璧にな。
明日の朝までだ。俺は念のため休んでくる。 |
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・・ってなんですかソレーーーー!!!!? |
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お前は日頃から俺のことを弟だと言い触らしているじゃないか。
兄貴だと言いたいならちょっとは兄らしいことでもしたらどうだ? |
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うっ・・!都合のいいときだけそゆこと言いますよねダンテって! |
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じゃあな、俺は寝る・・・どうも視覚が・・・・・
・・・!!!!?ウワァアッ!? |
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え?なに??どうしたんです・・・・・いぎぇええッッ・・・!!? |
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お・・・ま、ま、窓に・・! |
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ひえええええっっっ!!!?ぼ、ぼくにも見えてますよダンテ!! |
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こんな夥しい数の化け物どもどこから来たっ!!? |
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だだだだ、だから言ったじゃないですかぁ~~!!外が異様だって~~!!!
え~~~ん!!どうしたらいいんですぼく!ぼくたち生け贄とかにされちゃうんですか!? |
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落ち着け。
このおかしな景色は幻覚じゃなかったのか・・。
・・・とすると、どこかで結界が破られたうえ異世界のゲートが開いたということじゃないのか? |
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もしくは何か大きな罠にでもかかって、この建物ごとどこかに飛ばされたかだな・・・。 |
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そんな冷静になってる場合じゃないですよ~!モンスターたちがこっちに押し寄せて来てます! |
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・・・なにッッ!?・・・いや待て、この建物には常時
邪悪な者は立ち入れないよう結界が敷かれてあるんだ。
奴らが簡単に入れるはず・・・・ |
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あ、その結界今破られたみたいです。 |
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・・・・・ハァ!?なんだと!!? |
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バリンってなんか割れましたよ今。 |
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ま、まずいな・・。ねらいはなんだ?俺たちか?いやコイツか?? |
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・・・・・・・・。 |
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・・・・・・・・・・・・・。 |
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今!ぜったい!ぼくだけ外に放り出そうって思ったでしょ!?ぜったい思ったでしょ!!? |
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・・・まだなにも言ってないじゃないか。 |
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あー!やっぱり思ったんだーー!!
ぼくぜったいお外には出ませんからね!むしろ天使としてはぼくよりダンテの方が
格上なんですからダンテがぼくを守ってくださいよー!! |
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自分のことぐらい自分で守れ。 |
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わーひどいやー、弟ならがんばってお兄ちゃんをけなげに守ろうとしてみてくださいよー。 |
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そんなこと言ってる場合か!結界を張り直すぞ!手伝え! |
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ええーッ!?
さっきと言ってることがぜんぜんちが~~~う! |
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しばらく攻防を繰り広げるヴァイオレットとダンテとモンスターたち。
しかし多勢に無勢なモンスターたちの前に、ヴァイオレットとダンテは消耗していく・・・。 |
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・・・・うっ・・・さすがに厳しいな。 |
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ぼくもうダメ・・・・。 |
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はぁ??兄のくせに弟より先に倒れてどうする!!? |
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・・・・おい・・、ヴァイオレット?おい!! |
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くそっ・・・・俺たちもここまでか・・。 |
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どうせ全滅ならば・・・せめて・・・・天界にこのことを知らせなくては・・・・。 |
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・・・・こんな歪められた空間で、届くかどうかは・・・・・わから・・ないが・・・・グッっ・・・ゲホゲホッ・・・・。 |
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モンスターたちがダンテに迫ってくる! |
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・・・・・ええい!!!邪魔だっっ・・・! |
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必死でモンスターたちを振り落とすダンテ。 |
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・・・・・届け!届いてくれっ・・・!! |
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ダンテは胸のブローチを外し右手で大きく上に掲げる。
天に向かってブローチから光が放たれて、しばらくして光はあっけなく消えた。 |
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ギャーーーッッッ!!!! |
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モンスターの1匹がダンテに飛びかかり、ダンテの背中を掻き毟った! |
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グハッッ・・・!!!・・・・・・・ッ・・!! |
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ダンテは必死であらがいながらゆっくり意識を失った。
ヴァイオレットとダンテの消息が・・、そこで途絶えた。 |
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―――――――――――――――――――――――――
――――――――――天界。
ダンテの最後の希望が、そこへ放たれた。光はどこまで、届いたのだろう。 |
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――――――――――――――――――――――――― |
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なんでしょうか?ルーミネイト様。
この天界で位のない私になにかご用でもおありですか? |
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すまないね、りんご、そしてゼロ。 |
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僕がお役に立てることがあるならば、それは光栄です。 |
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ゼロ・・?(誰かしら・・) |
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君たち外部天界から来た者たちの力を借りたい。 |
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私たちの力・・・? |
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さきほど緊急信号が入ったのだが、
信号が乱れていて誰からのものかは特定できなかった。 |
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でもダンテからの定期報告が届かないことをみると、
そのことと関係があるんじゃないかと思ってね。 |
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・・僕たちは何をすれば? |
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ファーリリナと協力し、信号の発信元へ向かって何があったのか探ってほしい。
助けが必要であれば、ダンテを助けてもらいたい。 |
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あの戦闘力の高いダンテが緊急信号を送ったとなると、
何かとても危険なことが起こっているかもしれない。 |
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どうだい。私たちに協力してもらえるだろうか?りんご、ゼロ。 |
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ぼくはここへの協力は惜しみません。 |
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私がさほど力になるとは思えませんが、
そうおっしゃるのならば、やれるだけはやります・・。 |
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それではよろしく頼むよ。どうかくれぐれも気をつけて・・・。 |
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー |
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どうも・・・はじめまして。 |
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はじめまして! |
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・・・・どこの天界から来られたんです? |
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モンデイ・デュタ天界から・・・。あなたは? |
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ぼくはリンドルから・・でも、ぼくの天界は滅びてしまって・・・。
もう二度とあんな絶望はゴメンなんだ。 |
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貴方から、なにか強い意志が感じられたのはそのためですね。 |
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フフ、失って初めて気づくこともたくさんあるんだ。 |
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何かが滅びに向かっている時っというのは、みんながみんな、正気じゃない。 |
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何か本当に大切なものを、全員が見失って、病んでしまっている。
どんなに声を張り上げても、多くの人は盲目のまま破滅へと向かっていて、 ぼくはそれを止められなかった。 |
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世界すべてが病んで、正しい目を取り戻すことが出来なかった。
惑星の住人は希望を捨て、自分自身と世界を見捨てた。 |
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彼ら一人ひとりが選んだ道は、滅びの大渦はあまりに大きすぎて、ぼくにはどうしようも出来なかった。 |
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僕はあの大渦の前で、とてつもなく無力だったんだ。結局みんな、滅びてしまった。 |
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たとえ彼らが選んだ道だとしても、ぼくは助けたかった。
少しでもいい、わずかでもいい、何かを救いたかった。 |
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心なしか、ゼロの目は潤んでいた。とてもつらそうで、とても悲しそうだ。 |
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(・・これが彼の強さ。悲劇が、想いが、彼をこんなにも強くしてるのね。) |
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ごめんなさい遅れてしまって。向こうのゲートを開く準備を手伝っていまして。 |
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・・どうもはじめまして・・。 |
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あ・・・はじめまして! |
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あわてて目をこすり笑顔で挨拶するゼロ。 |
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ゲートの準備が整いましたわ。急いで向かいましょう!緊急信号が発信された場所へ。 |
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はい・・! |
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(うなずく。) |
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―――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――― |
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じゃあ、ファーリリナさんはルーミネイト様と同じ上級天使だったんですか。 |
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あの・・・いえ、ひとくちに上級天使と言っても実力は様々ですから。 |
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私の場合、一生懸命目の前の任務をこなしているうちに、
あるお方の目にとまってそれで・・。・・・運が良かったのです。 |
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お茶目な顔で苦笑するファーリリナ。 |
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・・だが次の瞬間空気が一変する。一同顔が瞬時に引き締まった。 |
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あれは・・! |
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巨大な空間が渦を巻いて聖なる者の進入を邪魔していますわ。 |
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すごい力だね。 |
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私が強行突破します。 |
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えっ・・! |
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・・では、私が援助します。 |
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じゃあ、ぼくは空間の安定化を計ろう。 |
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瞬時に各々の役割が決まり無駄のない動きと連係プレイで巨大な空間への進入を試みる3人。
とても大きな渦が、3人の素早い対処でみるみる大人しくなり、やがて彼女らは空間への進入に成功した。 |
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やった・・。 |
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見て、2人とも。すごい数だ。 |
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これは・・・・。 |
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空間を突破した3人に待ち受けていたのは夥しい数のモンスターたち。 |
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一体どうしたら・・。 |
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こんな数と戦っていては目的を果たす前に力尽きてしまいますね。 |
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表面だけでも彼らと同化しよう。
いつか気付かれるかもしれないけど、彼らの邪気に紛れ込めれば、
しばらくは身動きがとれると思う。 |
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表面の振動数を低下させます。 |
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お願いします。 |
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おねがいします。 |
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ゼロは沢山の装置を出現させ、3人にレーザーを当てた。表面がゆがみ始め、3人の聖なる気の放出が止まった。
彼らはモンスターたちと同じ気配を放つ同化に成功した。 |
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モンスターの群れに潜り込みましょう。 |
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はい。 |
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了解。 |
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3人は素早くモンスターたちの大群と混じることに成功した。とりあえず、気付かれてはいないようだ。 |
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ダンテさんはどこかしら・・。 |
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気配が小さすぎるのか位置がつかめませんね・・・。 |
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それにしても・・・(上を見上げるゼロ) |
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すごい、黒いものたちがお空でダンスしてる。
わっかを作って、まわって、離れて、またくっついて。 |
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ここはたぶん、恒星に対して自転軸がほぼ90度に傾いた惑星。
・・・・そして今いるのは永久に日の光が当たらない夜の世界側。 |
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ここって・・・すごい密度・・。いつもこうなのかしら。 |
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コウモリが竜巻を作り、空ではゴーストと黒い生き物が群をなして笑い、踊り、
地面ではモンスターたちの夥しい数で大行進している。 |
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この地響きのようなものはもしかして歌声・・・、
・・この群が少しずつ動いているのはもしかしてパレード? |
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どこかへ向かっているのかな? |
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あっ・・・!? |
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りんごが声を詰まらせ小さく驚く。 |
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りんごの視線の先にいたのは・・・・・りんご。
パレードの群れの中にりんごは自分自身と瓜二つの姿を発見したのだ。 |
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群の中のもう一人のりんごはピエロの姿で、黒い皮膚をして、果物を沢山抱えて、こちらを見た。 |
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・・・・おひとついかが? |
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いえ・・・・。 |
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りんごは混乱し、鼓動が高鳴っている。
どう対処したらいいのか・・・これは何なのか。なにもわからなかった。 |
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・・・・・・・。(にこ・・) |
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ピエロ姿のりんごはただ怪しく微笑んでいた。 |
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同じとき、ゼロもファーリリナも同じように、自分自身の姿を群の中に見た。 |
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それぞれが驚きを隠せず、言葉を失ってもう一人の自分自身を見つめるしかなかった。 |
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もう一人の自分の姿に意識を持っていかれている間に、群の行進はある地点まで来て止まった。 |
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やあや!今年のお客さんは豪勢だねぇ! |
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パピルンもうタイクツ~~~!!! |
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だあいじょぶ!冥王との契約で、今日は大暴れ出来るんだからねっ!好き放題しちゃいなよっっ!! |
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ぷぷぷっ!そーねぇ~~~!じゃみんな逆さ吊り~~~にしちゃおっっ!!☆☆ |
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群の先では親玉らしきモンスターたちがなにやら騒がしく盛り上がっていた。 |
|
最初に我に返ったのはファーリリナだった。 |
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あっ・・! |
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ファーリリナはもう一人の自分に、ある恐ろしいものを差し出され、
過去の記憶に無理矢理引きずり込まれた。 |
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そこで、自分を再び取り戻すと、我に返って自分が今モンスターの群の中にいることに気付く。 |
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りんご、ゼロ・・・! |
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2人に呼びかけるが応答がない。
この空気に蔓延する禍々しい気がそうさせるのか、
りんごもゼロも何かに囚われてしまっているようだった。 |
|
さすが・・・この世界の歪んだ空気は凄まじいですね。 |
|
あ・・・あれは・・・! |
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ファーリリナは群の先が騒がしいことに気づき、
その群の先頭に、ダンテとヴァイオレットの姿を見た。 |
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そしてダンテとヴァイオレットは包帯でぐるぐる巻きにされ、
ぐつぐつ茹だっている鍋の中へとつっこまれようとしている。 |
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いけない・・・! |
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ファーリリナは瞬時に天使の姿に変化した。
その光によってモンスターたちが一斉にそちらを向いた。 |
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ゲゲーーーッ!!なんだよもー、今年も妨害者かい?
今から面白いところなんだよ?わかるよね? |
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わかってないみたいよ~ん☆ |
|
とりあえず君たち儀式が終わるまで防いでてよ。 |
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カボチャがそう言うなり沢山の黒いカゲとモンスターが一斉にファーリリナに襲いかかる。
バチッ!!とすごい閃光を放ちモンスターたちは気体となって消えてしまった、が。 |
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まぁなんてこと・・・! |
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消えたはずのモンスターたちは満月の光ですぐさま元にもどってゆく・・・。
ここは彼らの世界。彼らが一年に一度だけ、心ゆくまで蘇り続け、活動できる、最高で最悪の祭典日。 |
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数が多すぎるうえ、すぐさま復活するモンスターたちに手を焼くファーリリナの横で、
包帯でぐるぐる巻きにされたヴァイオレットとダンテが鍋の中へつっこまれた。 |
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なにつくるゥ~? |
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お菓子?魔王?化け物?カカシ? |
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カカシいいねーッ!それにしよっ! |
|
エエッ正気ィ~~!!?フツーすぎてツマンナイっ! |
|
じゃ~ぁこんなのでっ!イケッ!! |
|
モンスターたちが一斉に歌いだした。
ウブダラブラダ~~~。ハロウィンの夜~♪
何でも叶う♪何でも出来る♪何もかも忘れて欲望のまま♪
オレたちゃ全能にして~~~オレたちゃ不死身~~~!!!!♪♪
楽しいことが大好きで~~楽しけりゃ何でもイイのさ♪なんでもアリなのさっっ♪ |
|
農夫も警察も聖職者も犯罪者も、子供も大人も今日はなんにもしがらみなんてナイッ♪♪
そう今日はハロウィンだから~~♪
何もかも忘れて、自分が誰だかも忘れて~~そう楽しけりゃすべてOK!
すべてがアリアリなんだぜ~~~♪♪ |
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歌が始まると、惑星の反対側、昼の世界で日食が起き始めた。
牢に囚われていた者が脱走し、パン屋さんも犬も、鍛冶職人も、仕事を放り出して家を抜け出した。 |
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どんちゃん騒ぎが始まって、食べ物を投げる人や昼寝を始める人、大声で叫ぶ人など、
それぞれ好き勝手をはじめ、もう町はめちゃくちゃ。 |
|
でも彼らは心のどこかで望んでいた。
もっと好き勝手に生きたい!もっと自由に生きたい!捕らわれのない場所で自由に生きたい! |
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それらどこかにあった皆が持っていた願望が、欲望が、夜の世界の住人の歌で吹き出した。 |
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おじさんが叫ぶ。今日は好きなだけ酒を飲むぞー!金が無くなろうがしったこっちゃねえ!
お姉さんが叫ぶ。今日は好きなだけ美味しいものを食べるの!!もう体型なんて気にしないわ!!
わたしは私でいいのよ!!! |
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一方で感情のぶつかり合いも激しく始まっていた。 |
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お前が毎日毎日俺に不平不満をぶつけるから俺がこんなに醜くなったんだぞ!!!
なによ、アンタよりもっとカッコいい人と結婚出来たのに、
こんなグズ亭主と結婚したせいであたしの人生台無しよ!すべてを返してッッ!!! |
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抑制していた栓がとれ、あるものは大笑いし、あるものは怒鳴り、あるものは大いに泣いていた。
そしてそんなことどこ吹く風というように、寝ている者も大勢いた。 |
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普段隠していた感情が、きれいに取り繕っていたものが、すべてはずれ、外に放たれた。
吹き出した。それは感情の渦となって世界を強く揺さぶった。 |
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ハッハハハ!!!ケッサクだねぇ~~~!!人間どもってば! |
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ニンゲンがこの夜の地を捨ててはや300年。世界の表側では大混乱~~~♪♪♪ |
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カカシのカンセイ~~~ |
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おっ!どれどれ。 |
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鍋の中から包帯でぐるぐる巻きのヴァイオレットとダンテが取り出された。 |
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ホドケホドケ~ |
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ゴーストが包帯をくわえ、ぐるぐると回って解いていく。 |
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ひゃおっ!! |
|
んん~~~いいんじゃない? |
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中からは一段と強そうな巨大で真っ黒なカカシが姿を表した。 |
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そこまでです・・・! |
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なんだァ・・? |
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ゲゲゲ~アレアレ・・! |
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気づくとあたりにはファーリリナの敷いた方陣が張り巡らされ、
陣の上ではモンスターたちの復活が妨げられていた。 |
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ゲッ・・!なんだアイツ!?あんな変なモンで俺たちの邪魔しやがって・・・ |
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せっかくのハロウィンの夜なのに~~~なんてことすんのぉっ! |
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まあ、せっかくなんだし、遊んであげようよ。
ほら、つよ~~いカカシたちも君と遊びたいってサ! |
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あはははははは!味方同士でやっつけ合えばいいわッ・・! |
|
モンスターたちの猛攻撃が更に強まりファーリリナを襲う。
ファーリリナは1つずつ片付けてゆくが、ハロウィンの夜は彼らモンスターに圧倒的に味方していた。 |
|
ファーリリナは周囲を黒い化け物どもに何十にも囲まれてもう姿が見えない・・。
もともとヴァイオレットとダンテだったカカシたちもそれに加勢する。 |
|
・・・ケケ、いいね、そのままそのまま・・・。 |
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ナカマ・・・ひとり、増えるぅ~~~??? |
|
増えるんじゃねぇか!ギャハハハハハ!!!! |
|
あはははははは! |
|
高笑いが空に響く、満月も、木も、ゴーストたちも、影も、みーんな嗤ってる。
ハロウィンの夜。死者が徘徊し、邪悪なものがうごめく夜。
ーみんな欲しがってる。・・冥界に連れてくナカマを。 |
|
ファーリリナにモンスターたちが寄り集まって、大きな黒い塊がどんどん大きくなる。
それを楽しそうに眺めながらダンスするパンプキンのお化けと魔女と狼男たち・・。 |
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ーそこに。
ザッ・・・と、影がひとつ。 |
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・・・・・増えませんよ。 |
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・・・・・ア? |
|
・・・・できた・・・ファーリリナのお陰で・・ハァ・・・ハァ・・。 |
|
・・・・これが何だかお分かりですか? |
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・・・・・・・・・・。 |
|
陣を全部つなげて・・・・何しようっていうのかなァ?オジョウサン。
・・楽しいショーでも見せてくれるの? |
|
ヴァイオレットさんとダンテさんを元に戻してください。
さもなくばこれで冥界の扉を開き、あなたたちを強制的に元の世界に送ります。 |
|
あははははは!何いちゃってんのォ~?そんなすごいことアンタたちに出来るわけないじゃーん。 |
|
ケケケ!ボクらせっかくこの宴を楽しんでるんだ。そんな物騒なことはよそうよ。 |
|
・・・・それでは扉を開きます・・。 |
|
・・・・話通じないなぁ~~。
・・・わかったわかった。カカシたちを元に戻せばいいんでしょ? |
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ジャック・・!どうせウソだってばぁ~~~ |
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・・でも戻すのはハロウィンが終わる頃にね。ちゃあんと戻してあげるから。
それまでボクらと遊ぼうよ?せっかく一年に一度のパーティーなんだ♪ |
|
そうですか・・・残念です。 |
|
両手を広げて構え、陣を発動し始めるりんご。 |
|
・・・ケケ。・・・・わかったよ。カカシたちを元に戻してアゲル。
ボクたちも最後までハロウィンを楽しみたいからねっ!・・パピル、みんな。 |
|
(ごにょごにょ)・・・・・・OK? |
|
オーケー・・・ |
|
・・・・・・・・むー。 |
|
・・・・じゃ・・・戻すよ、みんな準備いい? |
|
イイヨー!! |
|
・・・・スリー・・。 |
|
・・・・・ツー・・・。 |
|
・・・・・・ワンッ・・!! |
|
その瞬間・・・・りんごとゼロを更に巨大な黒い陣が取り巻いた! |
|
・・!?・・これはっっっ・・・・!!!? |
|
あはははははっ!アンタたちもうこれでみんなアタシの下僕~~~~!! |
|
ヤタ~~~~♪♪ |
|
すっごい巨大な陣だ・・・これでぼくたちを呑み込む気なんだ・・。 |
|
私達の陣が黒の陣に呑み込まれて行きますっ・・・!! |
|
わからないかい?ここはボクたちの世界なのサ!
どんなことが起こっても、ボクたちは自由を謳歌できる。 |
|
アンタたちがアタシたちに勝てるわけナイナイ~~♪♪ |
|
良い宴だったゼ~~~!!サイナラ~~~~ッッッ! |
|
あらかじめそこら中に陣が敷き詰めてあったんだ・・。それらを全部発動させてこんな巨大なものを・・・!! |
|
・・・・・どうすれば・・・。 |
|
ナカマ?ナカマ増える♪ |
|
オウ2匹もなァァッ!!! |
|
いけぇ~~~っっ♪♪ |
|
ギャハハハハハハ!!! |
|
ケケケケケ・・・・ |
|
あはははははは~~~っっ!! |
|
モンスターたちの力で黒い陣は一気にりんごたちを呑みこんでいく。
必死で抵抗するりんごとゼロだが呑み込まれるスピードのほうが圧倒的に速かった・・。 |
|
真っ黒い陣が夜の闇を、地面を、りんごたちを、
すべてを覆い尽くそうとした、 |
|
・・・そうはいきません。 |
|
・・・・ファーリリナ・・!!!? |
|
わおっ!なにアイツ! |
|
ナカマノコウゲキカラヌケダシタ~ |
|
見ろよアレっっ!!!! |
|
ファーリリナは急速に黒の陣に呑み込まれかかった自分たちの陣を書き換えて行く・・・。
それをりんごが援護し、ゼロが黒の陣の侵食を遅らせる・・。 |
|
・・・・・アイツら何する気? |
|
ワカンナイモノニカワッテユク~~ |
|
・・・・その前に呑み込んじゃえばボクらの勝ちサッ! |
|
ギャハハハハハハ!そうだゼェ!!!! |
|
あはは、何やってももう遅いの~~~♪♪ |
|
・・・そんなことはありませんよ、・・・行きます。 |
|
・・・その瞬間、ファーリリナは両腕を大きく広げ、天使の翼を開いた。
ピンク色にほんのり染まった優しい翼があたりを覆う。 |
|
呑み込みかけていた黒の陣が激しい音を立てみるみるうちに振り払われていく。 |
|
・・・・・まさかぁ!そんなっ! |
|
なんだァ!!あのスピードはよォオ!!!! |
|
・・・・・・・・・Re vilrs。 |
|
・・・・・あ・・アレなに??? |
|
門だ・・・・だが冥界じゃねェ!!! |
|
あ・・・・・まさか・・・ |
|
天界の光よ・・・私達を照らして。 |
|
天界のゲートがゆっくりと開き、
中からものすごい量の光が化け物たち目がけて降り注いでくる。 |
|
きゃあああああああーーーーーー!!!アタシたち・・・焼け焦げて・・・・死んじゃうゥ!!!! |
|
冥界の拷問よりタチがワリィゼ・・・!!!! |
|
ヤダヤダァ~~~~イタイノヤ~~~~~!!!!モットタノシイノガヨカッタ・・・・ |
|
ケケケ・・・しくじった・・ね・・・・・ |
|
見たこともないような至高の光は、
化け物とこの地を覆うように、容赦なく一斉に、残酷なほどの速さで降り注いできた・・!
・・化け物達が恐怖と苦痛の顔に変わっていく。
光に呑み込まれれば、
至上の激痛と、苦しみとで焼き焦がされるのだ。
聖なる者にとっての浄化の光も、化け物にとっては凶器でしかなかった。 |
|
・・・・それっ |
|
・・・・!? |
|
ファーリリナが急速に光をひとつにまとめてゆく、
・・・・そしてその光は鋭い刃となって、・・・・ある化け物を貫いた! |
|
・・・・・・・!!!! |
|
元に戻って・・! |
|
光が貫いたのは2体のカカシだった。
光に貫かれたカカシはたくさんの光にまとわれて・・・・
・・・姿が変化してゆく・・。 |
|
私が光の力を安定させます! |
|
ぼくはカカシたちの光を適合化させよう。 |
|
瞬時に援助にまわるりんごとゼロ。
3人の力と天界の暖かく大きな光によって、徐々に、徐々に、
・・カカシが元の姿へと変容していく・・・・。
|
|
そしてそれを、呆然と見つめるモンスターたち・・。
|
|
・・・・・・・・・・。 |
|
・・・・・・・・。 |
|
・・・・・・・・・・・・・。 |
|
ケケケ!面白いショーが見られたね!
お陰で面白い感情が蘇りかけたよ。 |
|
アンタたち何なの!?あんな巨大な門ここに呼び出すなんてっ・・!! |
|
・・・こわかったー。こんなのひさしぶり。 |
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いつぶりだろうね、・・恐怖なんて。 |
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思い出したくねぇモン思い出させてくれたみてぇだな。 |
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・・・プププ・・・・ビックリ・・・・・ |
|
・・・そんなとき、お空に小さく、渦が出来始めた。 |
|
・・・・あーあ、ケッキョク・・時間じゃねぇかヨォ・・・ |
|
えぇ~っ!?もう冥界に帰らされるのぉ~~!? |
|
・・・・お迎えが来たね。さぁさ!パーティーはオシマイだよ。みんな帰ろう! |
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もうちょっとでアイツラも冥界に連れて行けたのにぃ~~!!! |
|
ケケケ・・・ザンネン・・・・・ |
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ニカニカ妖しく笑っていた満月はゆっくりと姿を消し、
沢山のモンスターたちが冥界の門に吸い込まれていく・・・。
辺りを覆っていた沢山の混沌の渦が綺麗に取り払われ、そこに静寂が戻ってきた。
やがて冥界の門が閉まり・・ほんのり暗さが和らいだ。
その大地の上にぽつんと残った、3人の天使と2つの点。 |
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ファーリリナ、どうして天界の光でモンスターたち全部を浄化しなかったの?
あのまま光を降り注げば、すべてを浄化出来たはず。 |
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あれが・・・あの天界の光が、彼らにとってどれほどの苦しみと痛みを伴うものか・・
私は長い間見てきました・・・。 |
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力だけで何かをねじ伏せるのならば、それは悪魔たちのやり方と同じ。
なるべくならば・・・それはやりたくなかったのです。どうしようも無い時も沢山ありますけれど・・。 |
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天使たちはいつも冥界の近くまで降りて行って、悪魔たちに呼びかけを行っています。
ですが彼らは聞く耳を持とうとはしません。私達と彼らでは、根本的な、考え方が異なっているのでしょう。 |
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如何なる約束も、交渉も、和解も通じない相手でも、天使たちは諦めることをしません。
そしてその想いは私も同じ・・・。 |
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ですが今回は、カカシのまま夜が明けると、彼らを永遠に元に戻せなくなる気がして・・急いでしまいました・・。 |
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あんな大きな魔法を構築したのは初めてだったよ。ふふ。 |
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すごく大規模な戦いでしたね・・。 |
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お2人のお力のお陰で乗り切れたのですわ。ありがとうございました♥ふふふ。 |
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3人が和んでいる横で、2つの影がむっくり目を覚ます。 |
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・・・なぁ、おい、ヴァイオレット、なんだこれは・・。
藁や木の屑が体中にくっついているぞ。 |
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体のあちこちがカユい・・!あうノミがいっぱい・・・! |
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化け物どもはどこ行った?・・・いやそれより、
あれ、ファーリリナじゃないのか・・!? |
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あの戦闘力の高いファーリリナが駆り出されたとなると・・・相手は相当厄介な奴らだったんだな・・。 |
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ファーリリナ? |
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(ハッ・・!)こら、様をつけないか! |
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え・・・??でもさっきダンテ、ファーリリナって呼び捨てで・・・・・あぎゃっ!? |
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お元気そうで何よりです。(にっこり) |
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この度は・・私の力及ばぬばかりに、ファーリリナ様にまでご迷惑をお掛けしてしまい、
面目次第もございません・・・。 |
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ダンテ・・・あし、・・・足どけて・・・・・イダイ。 |
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ダンテさん・・・足、どけてさしあげて。 |
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ん?ああっ・・・、すまない、疲労から来る目眩でつい。大丈夫だったかヴァイオレット・・! |
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(何この良い子モードのダンテ・・!!!!) |
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それにしても何故、俺達はここに・・。 |
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君たちはあの建物の中にいたのかな?・・・建物の周りに巨大な陣の跡があるね。 |
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わぁ・・・ほんとだ! |
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・・・とすると、俺達は建物ごと飛ばされてきたのか・・!なんて大掛かりなことを。
・・・・しかし何故俺達が狙われたんだ・・? |
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・・・それは・・謎ですね。 |
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心当たりはないのですか? |
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あるわけ無いだろう。というか俺じゃない。
どうせこっちの半天使のせいじゃ・・・(ハッ) ・・あいえ、
心当たりなどあるはずも無いでしょう・・。 |
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(あ、さっきファーリリナさんの存在一瞬忘れてた!) |
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なにはともあれ、天界に帰りましょうか。準備も出来ましたので。 |
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(はっ・・いつの間に!)ファーリリナ様に帰還の準備をさせるなど、
気が付かず申し訳ございません! |
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いいえ、お疲れでしょうから休んでいてくだされば良いのですよ。
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(わぁ~すごいや、ファーリリナさんの方が疲れてそうなのに。
ダンテとちがって天使っぽい~) |
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(なんだ・・気のせいか?
さっきから半天使から小憎たらしい視線を感じるのは。) |
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・・・では帰還します。
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補助しますね。 |
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ぼくも。 |
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ーーーこうして、4人の天使と1人の半天使は天界へと帰っていったのでした。 |
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数日後、このハロウィンの夜のことを、みんなすっかり忘れていたのです。・・そう今年も。
・・・・・そしておそらく来年も・・。 |
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―――――化け物たちが跳梁跋扈する1年に1度だけのハロウィン。
さて来年は、どんなことが起こるのでしょう。。 |
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彼らはその時を、首を長くして待っています。
いつも人間たちを面白可笑しく冥界から覗きながら・・・。 |
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ケハハハ!楽しい夜だったね!今宵もありがとう半天使たち。 |
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来年は、もっと盛大な宴を準備してアゲル! |
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それまでに、たんまりお菓子を用意しといてね。
そうじゃなきゃ・・・・君たちをお菓子に変えちゃうヨ!☆ |
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さあ、ハロウィンを楽しもうぜっ!ケケケケケケケケッ!! |
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The END。 |