-ステップ5・最期のハロウィン-
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――――もう夜が明ける。
辺りは灰色が侵食し、梟の声も聞こえない。
捨てられた人形はゴミ箱へ還り、骸骨たちも墓の下へ力なく埋もれるしかなかった。
死者の群れはみなみな息を潜め、あるものは冥界から来た道を引き返す。
カカシは虚しく今年のハロウィンの夜が終わるのを眺める。
いつもいつも、始まりはお祭り騒ぎ。でも終わりは、再び殺された絶望が蘇るよう。
あるものは満足してもとの姿に帰るが、まだ多くのものは、悲しみのうちにあった。
この砂を噛むような虚しさはなんだろう。
毎年毎年、永遠と、無意味な繰り返しを過ごしているよう。
永遠に報われないなにか。それが癒えることは永遠に無い。
故に我らは亡者と呼ばれるのだろうか。故に我らは化け物という存在なのか。
一晩中、ひとしきり暴れまわって泥だらけ、すすだらけのカカシ。
体を支えていた木の棒は擦り減り、今まで踏みつけにした土たちがまとわりつく。
俺ァ何を考えていたんだっけか。
―――虚しい。なんて虚しいんだ。また俺はカカシに戻る。
ただカラスにフンをかけられて、ケモノ達にいいように突っつかれる毎日が始まる。
何なんだこの無限の時の繰り返しは。終わらない希望と絶望の繰り返しは。
俺ァもう終わりにしたい。どうしてまたこの終焉の時の虚しさを味わわなけりゃいけないんだ。
途中出会った機械のように、体が壊れるまで暴れればよかった・・。
もう俺ァ消えたい。
もう無限の時に縛られるのは嫌だ。またあの記憶が蘇る。炎の苦しみ死の業火。そうか俺ァ人間だったのかと、
そう、終わりが近づくといつも思い出す。あの苦々しい記憶を。
何かの罰かなんかか?親方の食べモンを何度かくすねたことはあるさ。それがなんだってんだ?
親方は俺たちがまともに食えないのを尻目に、いつも嫌というほど贅沢三昧さ。
何が悪い?俺ァ盗むね!目の前に宝があって、金があって、食べ物があるんならな!
盗むのが悪いんじゃない、そういう世の中にした奴が悪いんだよ!
・・アァ・・腹が減ってきた。何もかもが虚しい。また長い長い365日を耐えに耐えなきゃいけねぇのか・・。
もう終わりにしたい。
・・・・終わりに・・したい。
・・・フワッ。
白だったものが、消えかかって灰色になったゴーストが、
カカシの裾をもぞもぞと動き、ボロボロの衣服を引っ張っている。
・・・んん??なんだお前?もう祭りは終わったぞ。
「・・・・・ぱ。」
・・・ぱ?
「・・・・・・ぱぱぱぱ。」
???
「・・・・ぱぱ・・・、ぱぱ。・・・・・・・パパ。・・・・パパ。パパ・・。」
・・・・・・・・・・・。
一瞬何が起こったのかわからなかった。この奇妙なゴーストが何を呟いているのかも。
・・信じがたい事実、否定が思考を支配する。カカシは震える手でゴーストにそっと触れた。
「ぱぱぱぱぱぱぱ・・・!」
「お前・・・マトモにしゃべれよ・・俺がお前の親父だとでも言うのかァー?」
「ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ・・・・っ・・ぱ・・ぱぱ・・」
ゴーストは全身を左右に激しく振りながら、涙をぽろぽろとこぼし始めた・・。
「お、お、落ち着けって・・お前一体・・。」
「ぱぱ・・・ぱぱっ・・ぱぱっっ・・・・ぱぱぁ・・・!」
ゴーストはカカシの懐に飛び込んだ。
小さい小さいゴーストだったが、あまりのゴーストの勢いに、カカシは後ろにずり押された。
「ぱぱ・・・パパ・・・パパ・・・パパ・・・・パパ・・・・」
「お前が俺の息子だって証拠がどこに・・人違いじゃねえのかよ??」
「・・・・・み。」
ゴーストはあるものを差し出す・・。
「それ・・俺が送った・・いやだが、お前とっくに死んで・・。」
ゴーストが持っていたもの、それは・・、
木彫りのおもちゃ。
とっておきの、息子のために買った、今までで一番の贅沢品。
「パパ・・・パパ・・・パパ・・帰る。・・・一緒。もう一緒。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
カカシはいつの間にか男の姿になっていた。
男は無言でゴーストを見つめた。
「ぐっ・・そ・・っっ・・・!」
男は睨みつけるような目でゴーストを見つめた後、ゴーストを抱き抱えた。
するとゴーストは徐々に子供の姿へ・・。
「すまん。一度も姿を見てやれずにすまなかった!!」
親子は世界の果ての時の果てで、ようやく再会を果たした。
ぎゅむっと強く強く子供を抱きしめると、その瞬間彼らのもとに光の通路ができた。
「これがあの世って奴か?クハハ、笑えるねぇ。
俺ァ今まで知らず知らずのうちに自分の意志でここに留まってカカシごっこしてたってわけかい!」
「パパ・・もう一緒。一緒に帰るよ。」
「ああ・・帰るか。」
「んっ・・!」
2つの化け物は姿を消し、2つの人間の魂が上空へと昇っていく。
来年のハロウィンに、もう、踊り狂うことは、ないだろう。
あの繰り返しは、望むものにのみ、与えられる。永遠という時間とチャンス。
満足するまでここにいればいい。我らはいつでもお前たちを歓迎しよう。
来年の10月31日まで、我らを待ちわびておくれ。
――ハッピーハロウィン――
最後のキーワードをお教えしよう。
最後のパスワード[utage2012]
パスワードを揃えたら表の門番に話しかけてごらん。フフッ。
The・END
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