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[9]2つが1つにもどる時(page4)

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2つが1つにもどる時 《もくじ》
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ぼくは一層、外の様子が気になって仕方がなくなっていった。


見つかれば、殺される。

なのに・・・、あの言葉が、頭から離れない。

ぼくは慎重に、だが頻繁に、外の様子を伺うようになった。

以前覗いた時は目の前に天使がいたが、今はもういない。

今日も・・・・、誰もいない。・・・・いない。



今日も・・・やはり、なにもない。


小屋から外の世界に出ようとは思えなかったが、

ここまで外の様子を伺っても誰もいないことに、
ぼくはかえって不信感を抱き始めた。

だがぼくにはどうすることも出来ない、
この小屋から出てしまえば、ぼくは生きることを完全に放棄したのと同じ・・・



だからせめて、覗くことしか出来ない。


なるべく誰にも見つからないように、ゆっくり、そっと。


「天界が襲撃されたーーーーーー!!!!」

顔を道に出した瞬間だった。

鬼気迫る声が、ぼくの耳を劈く(つんざく)。

とっさに顔を引っ込めたぼくは、あることに気づく。



顔を引っ込めた瞬間、その声は全く聞こえなくなったのだ。
もう一度、ゆっくりと、顔を外へ………、

「どこだ!?誰の仕業だ!?」

・・・やはり、なぜかはわからないが、
この小屋の入り口の生け垣を越えた瞬間、あの声が聞こえる。



声の主を辿っていくと、遠くの空に天使2人の姿が見えた。

2人とも動転していて、こちらに気づく気配はない。

ぼくは少しだけ、2人の会話を盗み聞きしてみることにした。



「永凍宮の深部がやられた!」
「えっ・・!?それって・・・」

永凍宮とは様々なものを封じる場所。

そしてその深部がやられたということは・・・、


”・・・・ローザ先輩が危ない!!”


ぼくは咄嗟にそう思ってしまった、
その瞬間、思わず身を乗り出して・・・・
そのまま前へ転倒した。


「誰だっっ!!?」
小屋の外へ完全に身を乗り出してしまったぼくは、
その場にいた天使に存在を気づかれてしまった。


「あっ・・・・・・」


声にならないくらい小さな声と大きな後悔がぼくの全身に過ったが、時はすでに遅かった。


「この気配!!とうとう見つけた!!あの大悪魔ヴァイオレットだ!!捕まえて天界へ引きずり出せ。」

そのときたった2人だと思っていた天使は、あれよあれよという間に、何人にも増えていた。

近くをパトロールしていた天使、緊急信号で駆けつけた天使。

ぼくは足がガクついて、どこかへ逃げることもままならなかった。

とんでもないことをしてしまったことは、自分でもわかっていた。
ぼくのちょっとした好奇心がとんでもないことを引き起こしてしまったことも・・。



全身が緊張と恐怖でこわばって、頭は真っ白だった。

ぼくが処刑されるかもしれないことに気づいたのは、
自分の身柄が特殊で強力な封印によって拘束されただいぶ後だった。


ぼくは、大勢の天使に囲まれ、天界へ向かっていた。


ふつうの人間ならば昇天し楽園へむかうはずの経路なのに、
ぼくは、いまから、死を、受け入れなくてはならなかった。



ーーーーさようなら、ぼく、ぼく・・・・ぼく・・・。



ぼくに施された封印は大天使製の特殊で強力なもので、
いまのぼくでは、到底、外せる見込みはなかった。
ぼくはその執拗なまでの警戒態勢と目の前にある強固な拘束具によって
自分の"強制的な死"がそこまで迫ってきていることを自覚し始める。


なんで・・・・なんでだろう。


なんで・・・・・。


いつ死んでもいいと思っていたし、


いやむしろ、


”毎日”、死にたいと思っていたはずなのに


”毎日”だれかぼくを殺して楽にしてくれないかと願っていたはずなのに・・・・



いざ殺されるとなると、


なんでこう・・・・・


どうして涙が出てくるんだろう・・・・。


どうしてこんなにくやしくてやりきれないんだろう。




身動きが一切取れない状態で、ヴァイオレットは牢獄へと投獄された。


天界は肉体の身であるヴァイオレットが直接入ることは出来ず、いくつかの手続きを経て冥界に留まった後、
最終的に天界で処罰を待つことになる。



ヴァイオレットはただただ無言で、自分の残りの命の灯火を見つめていた。

抵抗する気力も今の彼にはないらしく、ただ彼に押し寄せる無念と後悔の感情は止むことがなかった。



天界で、見せしめの、恥さらしにされて、みんなの前で、処刑される。



昔モカが無実の罪をふっかけられて、処刑されそうになったとき、モカの親がこう言ってきた。


「モカは無実なんです、いっそあなたが代わりに・・・」




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