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[9]2つが1つにもどる時(page6)

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その音は全てを現実へと引き戻した。


暗いくらい現実が、ぼくの目の前に、








・・・まだ広がっている。


なにが起こったのだろう?
ぼくは今度こそどの世界からも消えられたんじゃないの?




顔を上げると周りの半天使がぼくの後ろを見ている。
その視線に誘われて振り返ると。



・・・・・・。



見覚えのある姿だった。


「もう止めにしよう。」


聞き覚えのある声だった。


それは目の前に立っていた。



「ルーミネイト様!!!!」


皆が口々に驚愕の声を漏らす。


「オブリビオンは解かれた。もはや彼を処刑することは出来ない。」



ーーーーオブリ・・・・ビオン・・・?



半天使たちも衛兵たちも困惑している。

ぼくもただ呆然とするしかなかった。。


「ヴァイオレット、少し、いいかな?」


ルーミネイトが手を翳すと、
ぼくの周りにあたたかな光が集まってきて、
ぼくの拘束具がゆっくりと解かれていく。


「なにをなさっているのです!!ルーミネイト様!!
こやつは大勢の天使を殺し魔王にまでなりかけた大罪人ですぞ!!?」


一人の衛兵が声を荒げたが、ルーミネイトは表情ひとつ変えず、ヴァイオレットの封印を解こうとしている。



速度の違う幾重にも織りなす八方形の図形がぼくの周りを取り囲む。
久々に感じる暖かい受容の光に包まれて、拘束具は消滅した。

ぼくの封印は解除されたのだ。


「さあ、行こう。」


衛兵が止めるのも聞かず、
ぼくはルーミネイト様に連れられて、ゴハの迷路を抜けた先にある、見たこともない領域までたどり着いた。


そこには黄金を含んだ急峻な崖みたいなのが連なっていて、
所々、神界からのエネルギーが吹き出ていた。


「・・・ルーミネイト様、いったい・・・」


ヴァイオレットが不安に耐えきれず、言葉を漏らしたその時。


今まで感じたことのないものだった。

それは、あたたかかった。

懐かしいような、涙がこぼれてくるような、そのやさしい赤い光。


それでいてなにか強大なものを感じて、ぼくは思わず肩を竦めた。

ぼくは自分の足下をずっと見ていた。

今までの癖なんだ。何かが、誰かが近づいて来たら、
相手の拒絶の目を見ないために、とっさに下を向いてしまう。
今回もぼくはそうしていた。

いつも通り。



・・・なのに。



「ヴァイオレット。」



名前を呼ばれて、思わず見上げてしまったんだ。

その姿を。

・・・・そしたら・・。




「・・・・・・え・・?」


そこにいたのは見たこともない天使だった。

赤い光。紫のウェーブした髪。
光が溢れ出しそうな太陽に似た優しい瞳。

「あなたは・・・?」



そうぼくが言うと、その天使は少し悲しい目をした。


「・・・無理もないですね。私はずっと、永凍宮の中にいましたから。」

「いずれオブリビオンが完全に解放されたら思い出すよ。」

横でルーミネイトがオブリビオンの名を口にした。




状況を全く飲み込めていないぼくに、目の前の赤い天使が言葉を続けた。


「わたくしはアスタナと申します。わたくしのために、貴方を巻き込んでしまって、本当にごめんなさい。」

ヴァイオレットは、困惑しながら彼女の言葉を聞いた。

「わたくしたちを助けていただけませんか?」


ーーーーぼくが?たすける?誰かを?



「わたくしは先ほどまで封じられていた身、力が戻るのに時間がかかります、そして・・・・」

アスタナと名乗った女性はルーミネイトの方を見る。

「私もここに来るまでに大層力を使ってしまってね。もうあまり力が残っていないんだ。」

ルーミネイトが静かにそう告げる。


「ヴァイオレット、あなたは・・・。」

アスタナと名乗った女性が何か言いかけて、すぐに押し黙ってしまう。


ぼくは戸惑いながらアスタナを見上げた。


ぼくの視線に促されて、アスタナは重い口を開く。


「あなたはいずれ、自分のことを思い出すでしょう。
オブリビオン解放の影響が天界全体に及んだとき、あなたは・・・。」




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